サーバー移転は「データを引っ越すだけ」と思われがちですが、メールやDNSが絡むと、切り替えの手順を誤るとトラブルが発生します。
この記事では、中小企業が自社サイトを移転するときの全体の流れと、特に注意すべきポイントを説明します。
サーバー移転が必要になる場面
サーバーを移転する主な理由は次のとおりです。
- 現在のサーバーのサポートが終了する、または費用が高くなった
- 表示速度や安定性に不満がある
- 機能(WordPressの自動インストール・バックアップなど)が不足している
- 制作会社を変えるタイミングで引き継ぐ
- セキュリティ上の問題が発生した
移転の手間は、メールを同じサーバーで使っているかどうかによって大きく変わります。メールを別サービス(Google Workspace、Microsoft 365など)で管理している場合は、Web・WordPressのデータ移転だけで済む場合があります。
移転前に確認すること
移転を始める前に次の情報を整理しておきましょう。
サーバー側の情報
まず現在のサーバーのアクセス情報を手元に揃えておきましょう。
- 現在のサーバーのログイン情報(コントロールパネル)
- FTPのアカウント情報
- データベースのホスト名・ユーザー名・パスワード・データベース名
ドメイン・DNS側の情報
DNS切り替えを自分でコントロールできる状態かどうかを確認します。TTL値は移転前に短縮しておくと切り替えが速くなります。
- ドメインの管理会社と管理画面のログイン情報
- 現在のDNS設定(ネームサーバーの向き先、AレコードやMXレコードの値)
- TTL(Time To Live)の設定値
TTLは「DNSの変更が反映されるまでの時間の目安」です。デフォルトで3600秒(1時間)や86400秒(24時間)に設定されていることがあります。移転の数日前に短い値(300秒〜600秒)に変更しておくと、切り替えが速くなります。
メール側の情報
メールを使っている場合は、アカウント一覧と各端末の設定情報を事前に書き出しておきましょう。
- メールアカウントの一覧とパスワード
- 各メールクライアントの設定(IMAP/POP、サーバー名、ポート番号)
- 現在のサーバーに残っているメールのバックアップが必要か
移転の全体的な流れ
おおまかに7ステップで進みます。DNS切り替え前に新サーバーの動作確認まで完了させておくのが、失敗を防ぐ最大のポイントです。
1. 移転先サーバーを契約・設定する
新しいサーバーを契約し、コントロールパネルにアクセスできる状態にします。旧サーバーとの並行稼働期間を確保するため、解約は移転完了後にしましょう。
2. WebサイトやWordPressのデータをコピーする
サイトの種類によって手順が異なります。WordPressはファイルとデータベースの両方をコピーする必要があります。
WordPressの場合:
- 旧サーバーでプラグイン(All-in-One WP Migrationなど)を使ってバックアップを取る、またはFTPでファイルをダウンロードする
- データベースをphpMyAdminなどでエクスポートする
- 新サーバーにWordPressをインストールし、バックアップをインポートする
wp-config.phpのデータベース接続情報を新サーバーの情報に書き換える
静的HTMLサイトの場合:
FTPでファイルをダウンロードし、新サーバーにアップロードするだけです。
3. 新サーバーで動作を確認する
DNS切り替え前に、新サーバーでサイトが正しく表示されるかを確認します。hostsファイルを一時的に書き換えることで、自分のパソコンだけ新サーバーにアクセスして確認できます。
WordPressでは、記事・画像・プラグイン・フォームなどが正しく動いているかチェックしてください。
4. SSLとメールの設定を新サーバーで行う
DNS切り替え前に、新サーバーでSSL証明書を取得し、メールアカウントを設定しておきましょう。移転後すぐに動く状態を作っておくことで、切り替え後のダウンタイムを最小化できます。
5. DNSを切り替える
すべての確認ができたら、ドメイン管理会社の画面でDNSのネームサーバーまたはAレコードを新サーバーに向けます。
切り替え後の反映時間について: DNSの変更は全世界のDNSサーバーに伝播するのに時間がかかります。TTLを事前に短縮しておけば30分〜1時間程度で反映されますが、長いTTLのままだと24〜48時間かかることがあります。
この間は、旧サーバーと新サーバーへのアクセスが混在するため、データベースへの書き込みが必要なサイト(ECサイトや会員サイト)では、切り替え時間帯を業務時間外にするなどの配慮が必要です。
6. メールの切り替えをする
メールを移転する場合、MXレコードの切り替えが必要です。
旧サーバーのメールを受信し続けながら、新サーバーへの移行準備を進め、MXレコードの切り替えは最後に行うのが基本です。
切り替え後は、Outlook・Thunderbird・スマートフォンのメールアプリで接続設定(IMAPサーバー名・ポート番号など)を新サーバーのものに変更してください。
7. 旧サーバーを解約する
新サーバーでの動作確認・メールの受信確認が完了し、問題なく稼働していることを確認してから旧サーバーを解約します。
移転完了からすぐに解約せず、1〜2週間は並行稼働させておくと安心です。
よくある失敗と対策
移転後に発生しやすいトラブルとその原因・対策をまとめます。事前に把握しておくことで防げるものがほとんどです。
メールが届かない時間が発生した
MXレコードの切り替えと、メールクライアントの再設定をほぼ同時に行おうとすると、タイミングがずれてメールが届かない空白時間が生じます。
対策として、MXレコードのTTLを切り替え前日に短縮し、切り替え後すぐにメールクライアントを再設定できる準備を整えておきましょう。
WordPressで画像や内部リンクが壊れた
WordPressのデータベースには旧サーバーのドメインが埋め込まれていることがあります。移転後はデータベース内のURLを新ドメインに書き換えるツール(WP-CLIのsearch-replaceなど)を使いましょう。
SSL証明書のエラーが出た
新サーバーでSSL証明書の設定が完了していない状態でDNSを切り替えると、ブラウザに警告が表示されます。DNS切り替え前にSSLを有効化しておくことで防げます。
まとめ
サーバー移転は手順と準備が9割です。事前にドメイン・DNS・メールの現状を把握し、DNS切り替え前に新サーバーの動作確認まで完了させておくことで、業務への影響を最小限にできます。
手順に不安がある場合や、業務システム・ECサイトが絡む場合は、移転前に専門家に状況を確認してもらうことをおすすめします。